JICDAQ登録アドバタイザーインタビュー・三井不動産株式会社 様
2025/07/18
認証・登録事業者の声
JICDAQが目指すデジタル広告市場の健全化
~安心・安全なデジタル広告市場の確立に向けて~
※2023年11月に行った対談内容です。(月刊JAA 2023年12月号掲載)
デジタル広告市場の健全化を目指し設立されたデジタル広告品質認証機構(JICDAQ)。
この度、JAA会員社であり、JICDAQの登録アドバタイザーの三井不動産株式会社 広報部長平原氏と、JICDAQ 中島代表理事による座談会を実施しました。
デジタル広告を取り巻く課題について、アドバタイザーとしてどう受け止めているか
中島 :
デジタル広告市場は課題が多く、今年(当時2023年)6月には経済産業省のデジタルプラットフォーム取引相談窓口が様々なデータの公表をしています。アドバタイザーの危機感が問われる中、 JICDAQ設立から約2年半となりましたが、今日は登録アドバタイザーの方々に、課題と平原さんのお考えなどをお伝えいただければと思います。また、アドバタイザーの登録を増やすために、JICDAQに望むこともお聞かせ願えればと考えています。
7兆円の広告市場の中でデジタル広告が約4割とメインストリームになってきました。デジタル広告の課題にいち早く対応し、多くの成果を収めている三井不動産さまでは、アドバタイザーとして、デジタル広告を取り巻く課題についてどう受け止めていますか。
平原 :
デジタル広告は近年、当社でも非常に重要な媒体の一つで、これからも出稿は伸びていくと認識しています。若い世代に受け入れられているだけでなく、それ以外の幅広い世代の方も目にする機会が大幅に増え、中身も多様化しているため、信頼性、透明性は非常に重要な課題だと認識しております。
アドバタイザーとして、企業、ブランドに適した広告枠での配信とともに、ユーザーの興味関心に応じた広告を出稿する等、掲載面での品質を高めて信頼できる広告を出稿しなければならないと思っています。これらは、広告会社の皆様とのご協力があってこそ実現すると思います。
三井不動産さまにおけるデジタル広告関連の諸課題について
中島 :
様々な企業でデジタル広告に対してトップの関心が低いことが問題になっています。また、広告会社に丸投げということがよく聞かれます。御社の課題をお聞かせください。
平原 :
三井不動産グループは当社だけでなく住宅に関しては三井不動産レジデンシャル社ならびに不動産仲介の三井不動産リアルティ社、また商業に関しては三井不動産商業マネジメント社、さらには東京ドーム社も含めた関係会社も多くのデジタル広告を通じて消費者に接しています。透明性、信頼性を高めることを、いかに浸透させていくかが一番の課題です。 JICDAQに加盟し、関係会社も含めて独自に注意点や課題、デジタル広告を取り巻く環境など、折に触れて情報共有しながら意識の向上を図っています。
経営層は、デジタル広告の重要性は十分認識していると思いますし、本来のブランド価値を伝えたいターゲットにしっかりと伝わるようにしてほしいという思いを強く持っていますので、アドフラウドやブランドセーフティなどの課題についても、引き続き取り組んでいきたいと思います。
中島 :
関係会社を含めてのガバナンスは、手間のかかる難しい部分が多々あると思います。勉強会などを定期的に開いていますか。
平原 :
年に数回、関係会社と広告に関する課題やグループとしての共通の目標などを情報共有する機会を設けており、デジタル広告についても同様に課題認識について共有しております。
中島 :
関係会社含めて三井不動産でコントロールしているということですか。
平原 :
関係会社については主にデジタル広告を出稿しているBtoCの企業が中心で、会社によって違いはありますが、各社にアドベリフィケーションツールの導入を促すなど品質の向上に努めています。
JICDAQの取り組みを知ったきかっけは
中島:
JICDAQの取り組みは、どのようにして知りましたか。
平原:
2021年初め、JAAを通じてJICDAQの事務局長からご案内があり、説明会に参加して知りました。その際に、デジタル広告を取り巻く様々な課題についてお話いただき、 JICDAQの取り組みに非常に賛同して入会しました。
JICDAQへの登録と社内の反応について
中島:
JICDAQに入ろうという、そのときの社内の反応はいかがでしたか。
平原:
デジタル広告は、今後出稿割合や重要性が増していくという認識はありましたが、ブランドリスクやアドフラウド、ブランドセーフティなどについてはあらためて知ることで、広告主や広告会社も含めて関係者みんなで課題を解決することが重要だと感じ、2021年4月にJICDAQ登録広告主となりました。
社内に対しては、JICDAQに加盟した趣旨やJICDAQからの説明をもとに、当社の考え、例えばアドベリツールの活用や望ましくないサイトのブロックリストの作成など出稿する上での注意点などを全社の掲示板で通達しました。また、広告発注会社については、基本的にはJICDAQの登録事業者あるいは品質認証事業者に発注する方針としましたが、社内ではデジタル広告に関わる全員が品質を高めていきたいという認識が強く、異論はありませんでした。ただ、コストも含めて事業上様々な制約もあるため、広告発注会社については登録事業者、品質認証事業者の利用を原則とし、例外も認めるとしたことで関係会社も含めて納得して進めています。
中島:
この方向で積極的に進めるということで、皆さんの反応は良かったのでしょうか。
平原:
そうですね。現在、関係会社9社でJICDAQ に登録し、アドベリツールも複数社で導入しています。先ほど申し上げたように関係会社を含めた共有会議を定期的に実施し、 JICDAQやアドベリツールなどについて議題として取り上げ、登録アドバタイザーとなるように促しています。
デジタル広告の諸課題に対して、今後注力していきたいことは
中島 :
課題が出て、対策を取ると、それをくぐりぬけるものが出てくるといったイタチごっこで、これからもそうだと思います。今後、注力していきたいことをうかがえますか。
平原 :
デジタル広告は今後ますます重要になってくると思うので、効率、品質を上げていきたいというのが大きなところです。これまではアドベリツールを導入して「ブランドセーフティな状態で出稿できているかを把握すること」を優先的に取り組んで参りました。また並行して、出稿に適さないサイトのリストを作成して広告が出ないよう設定するなど、ブランドリスクの数値改善は一定の効果が得られています。
一方ビューアビリティの数値は課題があると感じています。ブランドの適合性への取り組みも重要になってくると思いますが、まずは出稿した広告がユーザーにしっかりと見てもらうビューアビリティの改善に注力したいと考えています。
中島:
広告というものは、やはり人様の幸せとか希望とか夢をお届けするものかと思います。デジタル広告で、そうしたことを強く意識してなさっている取り組みはありますか。
平原:
例えば商業施設のららぽーとについては多くのお客様にご利用いただいておりますが、「ららぽーとはどこの会社がやっているんだろう?」といった必ずしも当社と結びつかないところもあるのかなと思っています。ビジネス層や比較的高めの年齢層の方はららぽーとのような当社の事業内容について一定の認識があるという調査結果が出ていますが、若い世代へのアプローチならびにブランドへの理解が課題と感じています。若い世代へのアプローチということで、例えば「三井のすずちゃん」シリーズも制作してますし、媒体としてはデジタル広告がメインになってくると思います。そういった方々にいかに興味を感じてもらうかということを意識して、分かりやすくお伝えできるよう工夫をして裾野を広げていきたいと思います。スポーツやエンターテインメントを活かした街づくりなど将来に希望を感じられるような当社の取り組みを紹介して、理解してもらえればという思いです。
中島:
スポーツとの連動、パラリンピック。様々な障がいを持つ方々に着目なさった。まさにそういうことが広げていくのかもしれませんね。
平原:
ありがとうございます。このたび日本サッカー協会への協賛も開始いたしました。世界的に競技人口もファンも非常に多く、当社の街づくりとの親和性も高いと感じているため、若い方も含めて当社の取り組みを知っていただく良い機会と思っています。
最後にアドバタイザーの皆さんへ一言
中島:
街づくりという大きなキーワードでさまざまなものが出来上がっていくというのはとても大事ですね。今、JICDAQの登録アドバタイザーは129社(※2023年11月1日時点)です。JAAのアドバタイザー含めて、一言いただけますか。
平原:
デジタル広告の重要性が増し、透明性や信頼性を高める取り組みを継続する必要があると考えており、日々勉強しております。加えて、当社や当社グループだけでどうにかなる問題ではないと思いますので、JICDAQ、JAAに加盟されている皆様、広告会社など関係者全員が協力し改善をしていくことが大事だと考えております。ぜひご一緒いただき、様々な場面で情報共有し、課題も含めて意見交換等できればと思っています。
座談会を終えて
中島:
JAAの専務理事、JICDAQの代表理事として、一点、教えていただけますか。JICDAQに加盟することでブランドセーフティ、アドベリを含め、どれくらいの効果があったのか、数値化したものを明示しなければ次の展開はないんじゃないかと話しています。
平原:
デジタル広告は、効果検証の数字は比較的取りやすいと思います。あまり掲載がふさわしくないサイトに関してリストアップすることなど、品質を高めるためにできる取り組みはあると思いますので、まずは賛同者を広げていくことが重要かと思っています。
小出(JICDAQ事務局長):
取引先に向けてJICDAQへの登録の呼びかけをした最初の会社が三井不動産さまだったと記憶しています。JICDAQスタート時にそこまでしていただける会社は少なかったです。アドネットワークとかDSPとか、デジタル広告の商流に入ってくるいろいろな段階のプレイヤーにも極力入るようにと働きかけられているとのこと。今もそのようにやっていらっしゃいますか。
平原:
そうですね。デジタル広告は構造もかなり複雑です。われわれのできる範囲ではありますが、引き続きお声掛けしていこうと思っています。品質を高めることについては日頃からお話していて、その延長でJICDAQへの加入についての話も出ます。
小出(JICDAQ事務局長):
ありがとうございます。2021年の春、三井不動産さまが広告会社をはじめ商流の様々な段階の事業者に呼びかけたというニュースが業界を駆け巡りました。広告会社は、広告主から登録するようにと話がくるということで、事業者登録が増えました。
高田(JAA事務局長):
設立当初から非常に積極的に活用していただいて、業界全体としてJICDAQが大きくなった原動力になったと思います。JAAでも指導力を発揮していただいて、いろいろご提案いただければと思うので、引き続きよろしくお願いいたします。