日本のCTVの可能性を解き放つ ー 迫る転換期、視聴体験と収益化の両立
2025/09/08
寄稿記事
寄稿提供:Publica by IAS
日本のメディア環境は、いま大きな転換点を迎えています。
リニアTV(従来型テレビ)の視聴時間は年々減少し、その代替としてストリーミングサービスが生活に定着しました。この流れの中で、CTV(コネクテッドTV)やモバイルストリーミングは、広告主とコンテンツ提供者にとって次なる主戦場へと移りつつあります。
日本では長年、リニアTVがメディアの中心を担ってきました。
しかし近年、特に若年層を中心にメディア消費行動に大きな変化が見られています。
新しい視聴習慣と日本市場の変化
Statistaのデータによると、日本におけるCTV広告費は、2025年には約7億1,588万米ドルに達し、2029年には8億2,240万米ドルに拡大する見込みです。スマートテレビやOTTサービス、CTVデバイスの普及に加え、高速ブロードバンド環境とモバイルファーストなデジタル文化により、日本市場はCTV拡大の土壌が整っています。
CTVはもはや「新しい選択肢」ではなく、リニアを見なくなった視聴者へリーチする唯一の有効な手段となりつつあります。
広告主が予算をCTVにシフトさせるなか、日本のパブリッシャーも自らの広告配信基盤を再点検し、この変化に備える必要があります。
視聴体験と収益化の両立という課題
視聴者がストリーミング体験に慣れるにつれ、広告への期待値も大きく変化しています。
その中で、パブリッシャーには大きな課題が突きつけられてます。
「文化的な繊細さと高品質なコンテンツが求められる日本市場で、いかに視聴者体験を損なうことなく収益化を図るか?」
視聴者は、唐突で違和感のある広告ではなく、シームレスで文脈に沿った広告を好む傾向があります。したがってパブリッシャーは、「ユーザー体験」と「収益性」という一見相反する要素を両立させるための新しい解決策を模索しなければなりません。
そして近年、こうしたニーズに応えるべく、さまざまな広告配信ソリューションが登場しています。
新しいアプローチがもたらす価値
日本のCTV市場が直面している最大の課題、洗練された広告体験と収益化の両立には、以下のようなポイントをカバーすることが有効です。
- シームレスな広告ブレイクの構築
日本の視聴者は、従来のテレビと同様に、洗練された広告体験を求めています。
文脈に合致し、関連性があり、繰り返し表示のない広告ポッド(広告枠の構成)を設計することで、リニアテレビに近いスムーズな広告体験を提供し、視聴者の離脱を防ぐことができます。 - プログラマティック競争による収益最大化
サーバーサイドヘッダービディングを通じて、複数のプログラマティックバイヤーからリアルタイムで入札を受ける仕組みを整えることで、ブランドセーフティや広告品質を保ちながら収益を最大化することができます。 - 文化的適合性と文脈適合性の確保
コンテキスト(文脈)解析やブランド適合性ツールを活用することで、番組のトーンや文脈に沿った広告のみを表示できます。特に、文化的なミスマッチがブランドイメージに直結しやすい日本市場において、これは特に重要なポイントとなります。
これらの取り組みは、単なる収益改善にとどまらず、日本のCTV市場が成熟していくうえで欠かせない「視聴者に選ばれる広告体験」を後押しすることができます。Publica by IAS でも、これらのニーズに応えるソリューションを提供しています。
計測の進化と信頼性向上
これまで日本のCTV広告は、インプレッション数といった限られた指標に依存してきました。
しかし、IAB Tech Labが推進する「OM SDK 1.4」の普及により、より精緻で透明性の高い計測が可能になりつつあります。
・デバイスが実際に稼働しているかの検証
・インタラクションを含むエンゲージメントデータの取得
・視聴行動やアテンションに基づく透明性のあるレポート
これらの進展により、広告主にとっては投資判断の基盤が整い、パブリッシャーにとっては信頼性の高い収益機会へとつながることになります。
これからのCTV広告体験
ライブ配信、スポーツ、アニメ、エンターテインメントなど、多様なコンテンツがストリーミングへ移行する中で、広告の「質」はかつてないほど重要になっています。
視聴者は違和感のある広告に敏感であり、その期待に応えることがCTV市場拡大の前提条件です。パブリッシャーと広告主が協働し、持続可能で洗練されたCTVエコシステムを築く取り組みはすでに始まっています。その実践は「よりスマートで効果的、かつ視聴者に寄り添った新しい広告体験」へとつながっていくでしょう。
CTVの拡大はもはや避けられない現実です。業界関係者には今こそ迅速な対応が求められています。信頼できる計測と洗練された広告体験の整備こそが、日本市場の次なる成長と競争力を決定づけるのです。
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