寄稿記事


2026年上期最新調査が明かす、AI時代のアドフラウド被害の実態

2026/09/24

寄稿記事

寄稿提供:株式会社Spider Labs

本稿のサマリー

2026年上期の平均アドフラウド発生率は5.58%となり、2025年通年を同一基準で再計算した4.32%から1.26ポイント上昇しました。国内インターネット広告市場の規模に当てはめると、上期の推計アドフラウド被害額は999億9,000万円、約1,000億円に達します。

同時に、アドフラウドの手口も高度化しています。bot判定クリックは2025年通年比で約2.2倍、接続元の国・地域を偽る「地域偽装」は約2.3倍に増加。人間の操作を模倣するなど、高度な挙動を示すbotの構成比は2025年1月の20.4%から2026年6月には64.4%まで上昇しました。

広告配信側でもAIによる自動化が進んでいます。2026年上期にMFAサイトで発生した推定被害額のうち71%が、広告プラットフォーム等によるAI最適化配信経由でした。下期に向けて広告主には、アドフラウド発生率だけでなく、配信量やbotの変化、AI最適化配信の中身まで継続的に確認することが求められます。

弊社試算で、国内推計アドフラウド被害額は約1,000億円

Spider Labsでは、2026年1月1日から6月30日までに、計測された約40.06億件の広告クリックを分析しました。対象となった推定広告流通額は約5,610億円です。

その結果、2026年上期の平均アドフラウド発生率は5.58%となりました。2025年通年を同一の集計基準で再計算した4.32%と比較すると、1.26ポイント上昇しています。

この5.58%を、2026年の国内インターネット広告媒体費予測3兆5,840億円に当てはめると、2026年上期の推計アドフラウド被害額は999億9,000万円、約1,000億円となります。
さらに、この水準が下期も継続した場合、年間では約2,000億円規模となり、当社調査史上、過去最高額となる見込みです。

業界別でも発生率には大きな差が見られました。クリック数1,500万件以上の業界では、自動車が15.49%、通信が13.19%、電機・家電が11.94%と、全体平均5.58%を大きく上回っています。

これらの業界では、1件のコンバージョンが持つ経済価値やLTVが高いこと、広告出稿規模が大きいこと、複数の媒体やキャンペーンを横断することで配信経路が複雑になりやすいことなどが共通しています。

アドフラウドの手口が高度化—人間に近づくbot

さらに2026年上期は、アドフラウドが増えただけでなく、「不正の中身」にも変化が見られました。

手口別に2025年通年と比較すると、絶対量では重複クリックが最も多い一方、伸び率ではbotと地域偽装が突出しています。
プログラムによる自動クリックであるbotの発生率は0.358%から0.798%へ約2.2倍、VPN等を利用して接続元の国・地域を偽る地域偽装は0.257%から0.588%へ約2.3倍に増加しました。

さらに注目したいのが、bot自体の高度化です。
従来は、同じリクエストを一定間隔で繰り返すような比較的単純なbotが中心でした。しかし現在は、接続元を分散させるだけでなく、実際のブラウザ上でカーソルを動かしたり、クリック間隔にゆらぎを持たせたり、ページをスクロールしたり、複数ページを回遊したりすることで、人間の操作を模倣するタイプが確認されています。

当社の運用分類では、こうした高度な挙動を示すbotの構成比は、2025年1月の20.4%から2026年6月には64.4%へ上昇しました。2026年4月から6月は3カ月連続で50%を超えています。
botが「大量に同じ動きをするもの」から、接続元を分散させ、人間らしい行動を模倣するものへ変化するほど、一つのIPアドレスや一つの行動指標だけでは異常を見抜きにくくなります。
広告主側でも、単純なbot件数だけを見るのではなく、接続元や端末、行動など複数のシグナルを継続して確認することが重要になっています。

AI最適化配信の拡大で変わるアドフラウド対策

広告配信側でも、大きな変化が起きています。

近年は、入札や予算配分、配信チャネルなどをAIが自動的に最適化する広告配信が広がっています。運用の効率化が進む一方、複数のチャネルや掲載先へ自動的に広告が配信されることで、広告主側から配信の全体像を把握する難易度も高まっています。

こうした変化は、MFAサイトへの広告配信にも表れています。

MFA(Made For Advertising)サイトとは、広告収益の獲得を主目的として、広告表示や流入を集めるために作られたWebサイトを指します。

2026年上期に当社が観測したMFAサイトへの広告掲載総数は約3億5,678万件、そこで消化された推定被害額は約2億1,705万円でした。そのうち、71%がAIによる自動最適化配信経由となっています。2025年通年の約62%から約9ポイント上昇しました。

ただし、これはAI最適化配信そのものによってMFAへの配信率が急上昇したことを意味するものではありません。

当社の検知範囲では、MFAサイトへの配信率自体は大きく変動していません。一方で、観測した広告配信データでは、従来型のディスプレイ配信量が約38%減少したのに対し、AI最適化配信量は約20%増加しています。

つまり、MFAへの配信率が急激に悪化したというより、広告予算の重心がAI最適化配信へ移る中で、MFA被害の重心も同じ方向へ移っていると見るのが実態に近いと考えられます。

AIによる自動最適化そのものを避けるのではなく、予算がAI最適化配信へ移るのであれば、広告品質を確認する対象もそれに合わせて見直していく必要があります。

2026年下期に広告主が見直すべきアドフラウド対策3つ

2026年上期には、「アドフラウド発生率の上昇」「botの高度化」「AI最適化配信への予算シフト」という3つの変化が確認されました。下期、とりわけ広告予算が増えやすい商戦期に向けて、広告主・マーケターが見直したいポイントを3つに整理します。

1.アドフラウド発生「率」だけでなく「量」で対策の優先順位を決める

アドフラウド発生率が高い媒体ほど、必ずしも被害の絶対量が大きいとは限りません。

例えば2026年上期の検索連動型広告は、アドフラウド発生率が2.1%と比較的低い一方、クリック数は約4.76億件と大きく、失われたクリックは約1,000万件となりました。
対策では発生率だけを見るのではなく、発生率と配信量の両方を確認し、自社にとって損失の絶対量が大きいチャネルから優先的に点検することが重要です。

2.botの「量」だけでなく「質」の変化を継続的に監視する

botや地域偽装は上期に大きく増加し、人間に近い挙動を示す高度なbotの比率も高まっています。そのため、一度チェックして問題がなかったからといって、その状態が続くとは限りません。

bot率や地域偽装、流入元などの変化を定期的に確認し、セールや繁忙期など広告予算が増える時期には、通常期より短い間隔で監視することが重要です。

3.AI最適化配信はCPA・CVだけでなく「中身」を検証する

AIによる広告配信では、成果データをもとに配信先や予算配分が自動的に最適化されます。そのため、CPAやCV数だけでなく、どのチャネル・掲載面へ配信されたのか、MFAサイトへの掲載が発生していないか、無効なクリックやCVが成果データに混入していないかまで確認することが重要です。

さらに、広告クリックからCV、有効CV、商談・購入、LTVまでをつなげて見ることで、広告上の成果と実際の事業成果にズレがないかを確認しやすくなります。

AIによる自動化の範囲が広がるほど、人が確認すべきポイントは、細かな配信設定だけではなく、「どのような流入・成果データをAIが学習しているのか」にも広がっていきます。

おわりに:AI時代のアドフラウド対策は「継続監視」が前提に

2026年上期は、攻撃側と広告配信側の双方で自動化・高度化が進んだ半年でした。
botは人間と見分けにくくなり、広告配信ではAIによって予算や配信先がより広く自動最適化されるようになっています。

AIを広告運用に活用すること自体が問題なのではありません。AIによって広告運用の速度と規模が大きくなるのであれば、それに合わせて、広告品質を検知・監視する仕組みも高度化する必要があります。

今後はCPAやCVを改善するだけでなく、その成果を生み出しているトラフィックが適切なものか、広告費がどの配信先で消化されているのか、成果としてAIに学習されているデータが正しいものかを継続して確認することが重要です。

自社での定点観測に加え、JICDAQをはじめとした第三者認証の枠組みや、認証を受けた事業者を活用しながら透明性の高い広告取引環境を構築することも、広告品質を担保する一つの方法です。

年末商戦をはじめ広告出稿が活発になる下期に向け、本稿がアドフラウド対策や広告品質の確認方法を見直すきっかけとなれば幸いです。

 

調査概要

・名称:アドフラウド調査レポート(通年版2026)
・調査主体:株式会社Spider Labs
・解析対象:「Spider AF」によって計測された広告トラフィック(総クリック数:60億5852万件)
・調査期間:2025年1月1日〜2025年12月31日
・調査方法:自社データベースに基づく分析

※調査レポート詳細は、株式会社Spider Labs公式Webサイト【https://jp.spideraf.com/】よりご覧ください。

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